【記者会見報告】『 #保育園に入りたい を本気で語ろう2018 ~みんなが笑顔で子育てできる社会にするために~』

「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」(以下、当会)は、2018年2月26日(月)に、衆議院第一議員会館で開催したイベント『 #保育園に入りたい を本気で語ろう2018 ~みんなが笑顔で子育てできる社会にするために~』に先立ち、メディアを集めて記者会見を行いました。

活動報告および当会のアクションについて

冒頭に当会代表の天野妙より、これまでの活動報告および待機児童問題の解消に向けて当会が進めているアクションについて説明しました。

説明では、当会が2017年1月に発足し、コアメンバー10人(2018年4月現在は11人)で運営しており、SNSを使った情報発信やアンケートによる世論調査を実施していること。
昨年10月の衆院選では「#子育て政策聞いてみた」のハッシュタグでアンケートを取り、約7割が「無償化よりも全入化を優先してほしい」と求めている実態が明らかとなったこと。
また、11月には署名サイト(Change.org)で集めた3万2千筆におよぶ署名を自民党本部へ提出し、そして、議員会館内において保育の当事者を集めて集会を開いたり、与野党の区別なく各議員に対して待機児童問題の現状を伝えるなどし、当事者の声を政治の場へ直接届ける活動を行ってきたことを紹介しました。

現在進められている政策への問題提起

その後、現行の保育園の入園システムを玉入れに例えて説明し「待機児童問題を解決するには国ベースで動く必要がある」として、現在進められている政策に対して、5つの問題提起を行いました。

問題提起1:「目標を修正せずに、計画を進めていいのか?」

間違った目標設定に基づいて計画を進めれば、期待された結果が得られないことは明白です。最初の目標が間違ったまま政策を進めることには反対です。

問題提起2:「幼児教育・保育の無償化は『今』なのか?」

待機児童問題が解消されていない状況で無償化を進めれば、保育サービスを受けられていない方と無償化の恩恵を受けられる方が生じ、むしろ教育格差を広げることにつながります。
まずは、全入化が優先されると考えています。

問題提起3:「政策と世論(ニーズ)方向性が合致しているのか?/無償化は『何のため』にやるのか?」

各メディアの世論調査でも「幼児教育・保育の無償化」よりも「待機児童解消」が優先であるとの回答となっており、政策と世論で求める方向性が異なります。
また、無償化の効果で引き合いに出される研究結果は、経済的に恵まれないアメリカの低所得者層を対象とした古い研究によるものです。現代の日本の状況とは合わないため、政府が期待している経済効果は得られない可能性が高いと考えています。

問題提起4:「質の議論(特に保育士の質)は二の次に/構造の質ですら、危うい」

政府の子ども子育て政策で待機児童対策の費用とされる3000億には、保育士の処遇改善に関する費用は含まれていません。OECDが定義する保育の質には、6つの項目がありますが、物理的な要件である「構造の質」が政府の規制改革会議でより低いレベルとされようとしています。

問題提起5:「当事者はいつも不在/Nohing about us,without us/(私たちのことを、私たち抜きで決めないで)」

子ども子育て政策に関わる各種の会議では、有識者は呼ばれても当事者はこれまで蚊帳の外に置かれていました。ぜひ、今子育てを行っている当事者を議論の場に加えてほしいと考えています。

質疑応答

最後に記者の方々からの質疑応答があり、以下のようなやり取りとなりました。

◆これまでの活動と成果について

(問)
政府の対応について変化を感じるものはあるか

(答)
一部の議員しかとりあげてもらえていなかったのが、立憲民主党の枝野さん、希望の党の玉木さんなどがが取り上げ始めた。
これまで女性議員の専門といったものだったのがひろがりつつあると感じる。でも課題解決にはまだ時間がかかると考えている。

(問)
32万人分の受け皿を作るなど政府の動きはありつつ、解決には時間がかかりそうだが。

(答)
施設を作るスピードはこれ以上早めることは難しいとは認識している。
もともと武蔵野市の建設計画が地元住民の反対でなくなったことが(この活動を始める)きっかけだったので、時間がかかることは分かっている。
フランスの例でいうと、施設の充実だけでなく保育ママ制度が充実しており、保育ニーズの受け皿となっている。
日本においても、保育ママの拡充など違った解決策も必要とは思うが、いずれにしても急ぐ必要がある。

(問)
去年と何か違う点、今年の保活の特徴などかんじられているものはあるか

(答)
(小林:品川に住む2児の父親)品川区では、過去最大規模で定員を増すなどしており、自治体レベルでは頑張って解消に向けて進んでいるところもあると考えている。

(天野代表)待機児童問題については、報道の方が飽きてきていると感じる。変化がないことから、風物詩化している。
参加者でいうと、去年までは女性が多かったが、今年は男性の参加者も増えている。当事者ではない人も多い。社会課題だと認識してくれている人が少しずつ増えている。
報道される際には、ぜひ「怒っている母親ら」ではなく、「解決してほしい保護者たち」としてください。

(問)
自民党の片山さつきさんに提出された署名はどう活かされそうか

(答)
署名の自由記述欄のコメントを片山さんからコンサル会社で分析してもらっており、その結果を私たちにもフィードバックされた。
規制改革会議のプラットフォームに入れてあげたいと片山さんからも言われている。

◆幼児教育無償化の政策が進んでいることについて

(問)
無償化(の議論)が進んでしまい、戦略会議(人生100年時代構想会議)では(認可外保育所等の利用者への補助額が)上限3万5千円とでてきているが、無償化が進んでいることを現実ベースでどう見ているか

(答)
無償化の範囲の補助金がどこまでなのかというのは議論が必要。チーム内では、どの家庭にも同じだけ権利があると考えている。基準は公定価格にして、その範囲で補助するのが誰もが納得できる線引きではないか。

◆保育の質について

(問)
企業の拠出などもあるが。質の問題は

(答)
企業主導型は去年からで、応募が多いが、質の担保にはいろいろな監査等がいるのでは。
複合的な問題が関わっているので一筋縄ではいかないと考えている。

◆保育の量について

(問)
32万人で足りないとのことだが、フルスペックの保育園だけという解決策ではないのかも、働き方が多様になる中でどういうニーズがあるか

(答)
働き方改革とセットでは。煩雑な管理になるので、それだけの仕組みに持って行くことが、認可保育園の仕組み自体が古いので、園のノートの電子化すらできないところで、効率化できるのか。応能負担なので、多様なニーズに対応するには補助金制度とかも絡んでくるので色々難しいのでは

(小林)裁量労働制も話題だが、働き方がもっと自由になればいいのでは。育休だれもが時短勤務とれるような柔軟に

今は就労している人しか利用できないが、孤育てといわれる専業主婦も利用できたりする方が理想。社会全体でどう育てるのかを考えて変えて行くべき

◆広域利用の検討について

(問)
子供子育て支援法の協議会の話で、広域利用について議題に上がっている。この利用は進むか。課題は何か。

(答)
当事者の声として広域利用したいという声があがっているかどうかがわからない。その中で話が進むことがはたしていいのか。
全体的に飽和している中で、本当に
区境などに住んでいる人の大変さはわかるので、そういう人にはいいかもしれないが

(問)
広域利用は待機児童の解消につながるか

(答)
区境を超えてより近い園に通うことができれば通園の大変さは減ると思うが、全体の受け皿が不足している中では解決策にはならないと考えている。

◆国と自治体との役割について

(問)
議員の意識がないということだったが、東京の問題だとか、どういう反応があるのか具体的に。

(答)
自分の選挙区には待機児童がいない、という認識の議員が大半。
しかし、データをしめすと「あれ?いるね~、でも都市部だよね?」という反応。
都市部だけほっといていいのか、という議論に。
こちらは、隠れ待機児童も含めたデータも出している。

(問)
自治体に責任があるのではという意見もあるのでは

(答)
自治体側で言えば、例えば世田谷区では3000億の予算のうち300億を子ども子育て予算に使っており、もういっぱいいっぱいの状況である。
自治体に押し付けるのではなく、国が率先してサポートするべきでは。

(問)
世田谷区で議論されているもので、不承諾通知をほしいという保護者がいる問題があるがどう解決するべきか

(答)
不承諾通知が欲しくなる気持ちを分析すると、とても遠く無理をしないと通えないような園へ小さいうちから預けてまで復帰したいか?ということになる。
また、育休を2年まで延長したいから不承諾通知をとりたいというのは、待機児童とは別の問題で、働きながら子育てすること自体がとても大変になっていることの象徴と言える。
働き方改革で、子育てしながら働くことが苦行となっていること自体が問題ではないか。
働きながら子育てする親の気持ちにもっと寄り添って欲しいと思う。

◆東京都の政策について

(問)
東京都がベビーシッター補助を出しているがどう評価するか

(答)
まだ議論が必要と考える。
ただ、やる前からだめ、ということではなく喫緊の課題であるので、待機児童対策を進めると旗印をかかげてくれたことをまずは評価したい。

◆これからの活動について

(問)
今後の解決策。会としては具体的にどんな解決策を提案してほしいのか

(答)
今日の午後に開催するイベントで、フランスの保育政策に詳しい高崎順子さんなどの意見を聞きたい。
ただ、箱を作ることで量を確保できるのでそこはまず進めてほしい。

(問)
保育ママが日本では規模を持って進まないので、それはなぜなのか。

(答)
フランスでは会議の中に当事者が入っていると聞いている。
当会として明確で具体的な施策までは出せてないので、これかられを提案していきたい。

(問)
この先この提言をどう持って行くのか。予定は。
また、このタイミングで提言、イベントをするのは、今年の春のは入れないという人たちが出てきて注目されるからか。

(答)
このタイミングというのは、声を束にして届けやすい時期だとは思っている

要望を今後どうするか、届けて行くのは考えて行くが、議員先生一人一人がまずこの問題の理解が深くないので、個別にまず話して行くのが一番好ましいのではないかと考えている
午後のイベントをするのは、議員の方々にも理解を深めてもらうためであり、各議員のお部屋に訪問して保活ストーリーを配ったのもそのためである。

掲載メディア

「うちの選挙区に待機児童はいない」という国会議員に「保活」の実態を知ってほしい
希望する人が保育園に子どもを預けられるように、保護者グループが提言。
https://www.buzzfeed.com/jp/akikokobayashi/hoikunenhairitai?utm_term=.heoPEb35Na

無償化より待機解消を 会見で訴え
http://mainichi.jp/articles/20180226/ddf/041/100/017000c